放射能汚染を伴う伴侶動物の扱い

どのような災害時でも人命尊重が最も重要であることはいうまでもありません。伴侶動物を災害地に残して去るのは、つらいことです。過去の自然災害では、避難所で動物が飼えないために、置き去りや解放するケースが多くあります。しかし、現在では災害発生直後から、多くの獣医や動物愛護団体がボランテアとして救護を始め、災害時から短時間に動物救護活動が行われるようになっています。また、避難所などで飼えない、あるいは救護した伴侶動物は、保護施設であるシェルターで預かり、食事や健康管理をしながら、避難者の生活が安定して元の飼い主の手元に届けるまで、あるいは新たな飼い主さんが見つかるまで保護をするようになってきています。

原子力災害時には、風向きなどの天候条件によって放射能汚染の広がりが変わります。また、地震などによってライフラインが破壊された複合災害地域とライフラインは保全されているが放射能汚染だけが起きた地域に分かれることもあります。いずれにしても、人も伴侶動物も安全経路ですみやかに放射能汚染が無いか非常に低いか場所に避難することになります。そのような避難先に伴侶動物保護シェルターを設置することになります。実際に災害が発生した場合には、迅速な対応ができるためにはあらかじめ複数の候補地を決めておく必要があります。現在、本会では行政と相談しております。

シェルターで伴侶動物を預かるには、飼い主の方が伴侶動物の専用ケージを用意して頂くことが大切です。シェルターでは預かる伴侶動物用のケージを用意しますが、伴侶動物の大きさや体重に合ったケージを十分に準備保管するには限界があります。飼い主さんの用意したケージがあれば、避難時に伴侶動物を同伴することもできますし、シェルターでも短時間に多くの伴侶動物を受け入れることが可能になります。また、少しでも慣れたケージであれば、伴侶動物の不安も少なくなります。多くの救護ボランテアと同様に、本会でもお預りした伴侶動物の健康管理や適切な保護環境を確保するために、普段から必要な機材や医薬品を動物病院で備蓄するだけでなく、ペットフード会社や医療関係の会社に支援をお願いしております。伴侶動物を保護している間の管理は、獣医師や動物愛護ボランテアが行います。この間の運用経費は、義援金で賄います。このような方法は、これまでの災害でもほぼ成功しております。

原子力災害によって環境汚染が起きた場合には伴侶動物が汚染されることが考えられます。実際に福島の事故では放射能に汚染した伴侶動物が見つかっております。放射線は目に見えないし、肌で感じることもできません。しかし、放射線計測器で測定することができます。シェルターで伴侶動物を受け取る時に、体表面の放射線の線量測定を行い、汚染があれば健康影響の評価や除染処置を行います。最終的には、伴侶動物に体表面や体内の放射能がゼロになるか、飼い主さんの二次汚染の心配がない判断をして、伴侶動物と飼い主さんがともに安心して元の生活を送れるようにします。  原子力災害時に、伴侶動物を汚染地域に置き去りや解放すると、放射能汚染が高い地域(警戒区域)では、人が立ち入れないので、救護や給餌もできなくなるだけでなく、伴侶動物の放射能汚染や放射線影響の不安が高まる結果を招きます。繰り返しになりますが、人命尊重が優先ですが、できるかぎり運搬用ケージにいれ、避難するようにしてください。